Tuissは、英国発のオーダーメイドブラインド・カーテンブランドとして、日本を含む世界各国に展開しています。国が変われば、住まいの形、気候、光の入り方、インテリアの好みも変わります。その違いは、窓辺に選ばれる商品にもはっきりと表れます。
この連載「世界の窓辺レポート」では、Tuissを展開する各国の担当者のコメントをもとに、世界の窓まわり事情を国別に紹介していきます。各国のトレンドに加え、なぜその商品が選ばれているのか、住宅事情やライフスタイルの背景まで掘り下げながら、日本の住まいにも取り入れやすいヒントをお届けします。
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第1回は、Tuissの母国であるイギリス。古い住宅が多く残る街並み、縦長のサッシュウィンドウ(上げ下げ窓)、木の建具や床、そして限られた自然光を大切にする暮らし方。イギリスの窓辺には、住宅の歴史と日々の暮らしが色濃く反映されています。
今回は、イギリスで木製ブラインドやローマンシェードが選ばれる背景と、近年人気が高まっている温かなニュートラルカラーのトレンドを、現地担当者のコメントとともに紹介します。
目次
Toggleイギリスでは、なぜウッドブラインドが住まいに馴染むのか
イギリスの窓辺を考えるうえで欠かせないのが、古い住宅の多さです。
「English Housing Survey 2024–25」によると、イングランドでは所有住宅の20%、民間賃貸住宅の32%が1919年以前に建てられた住宅とされています。つまり、築100年以上の住宅が、今も日常の住まいとして使われているということです。
さらに、国土交通省の「令和7年度 住宅経済関連データ」には、居住水準等の国際比較として「人口千人当たりの新設住宅着工戸数」が掲載されています。2024年のデータでは、日本が6.4戸であるのに対し、イギリスは1.9戸とされており、日本に比べて新しい住宅が次々と建つペースが低いことがうかがえます。
日本では、古くなった住宅を建て替えるという発想が一般的ですが、イギリスでは古い住宅に手を入れながら住み続ける文化が根強くあります。そのため、窓装飾も「新しい部屋に合うもの」を選ぶだけでなく、既存の窓の形や、床・家具・窓枠の質感に調和するかが重要になります。
イギリスの街並みには、18世紀から19世紀前半に広まったジョージアン様式、19世紀半ばから後半のビクトリアン様式、20世紀初頭のエドワーディアン様式など、時代ごとの特徴を持つ住宅が数多く残っています。左右対称で端正な印象のジョージアン様式、装飾性のあるビクトリアン様式、明るさや住みやすさを重視したエドワーディアン様式。それぞれに雰囲気は異なりますが、いずれの時代の住宅でも、上下に開閉するサッシュウィンドウ、いわゆる上げ下げ窓が、住まいの印象を形づくる重要な要素になってきました。

サッシュウィンドウには縦長の窓が多く、ウッドブラインドのスラット(羽根)がつくる水平ラインとよく調和します。縦に伸びる窓のプロポーションに、横のラインがほどよいリズムを加え、窓の形を活かしながら光を細かく調整できるのです。イギリスの担当者も、ビクトリアン様式やエドワーディアン様式の住宅には背の高いサッシュウィンドウが多く、ウッドブラインドがそのプロポーションに合いやすいと説明しています。
ウッドブラインドがイギリスの住まいに馴染みやすいのは、単に「木が好きだから」ではありません。古い住宅に残る窓枠や幅木、床や家具の木の質感と自然につながり、窓そのものの形を活かしながら光を調整できるからです。住まいの歴史や建築的なディテールを隠すのではなく、それらを引き立てる窓装飾として、ウッドブラインドが選ばれていると言えます。

ローマンシェードは、英国らしい柄を楽しむ選択肢
イギリスの窓辺でもうひとつ特徴的なのが、ローマンシェードです。布の柔らかさを活かしたローマンシェードは、伝統的な住宅の雰囲気と相性がよく、特にビクトリアン様式の住宅などで見られるベイウィンドウにもよく馴染みます。
ベイウィンドウとは、建物の外側に張り出すようにつくられた出窓のこと。部屋に光を取り込み、外の景色とのつながりを生み出してくれる一方で、窓まわりの形が複雑になるため、カーテンやブラインドの選び方にも工夫が必要になります。

その点、ローマンシェードは窓ごとにすっきりと取り付けやすく、ベイウィンドウの形を活かしながら、柔らかくレイヤードされた印象をつくることができます。カーテンのように大きく覆うのではなく、ひとつひとつの窓に合わせて光や視線を調整できるため、ベイウィンドウの立体感をきれいに見せやすいのも魅力です。
ローマンシェードは、布を上げ下げして使うシェードで、下ろしたときに生地の柄が美しく見えるのが特徴です。現地担当者も、ローマンシェードについて「生地のリピート柄全体を見せることができるため、ウィリアム・モリスやリバティのような複雑な柄と相性がよい」とコメントしています。
Tuissでも、ウィリアム・モリスやエマ・ブリッジウォーターなど、英国らしいデザインを取り入れたコレクションを展開しています。柄物のカーテンは少し取り入れにくいと感じる場合でも、ローマンシェードなら窓のサイズに合わせてすっきりと収まり、空間のアクセントとして使いやすいのが魅力です。
また、ウィリアム・モリスやリバティのような英国デザインは、日本の住まいとも意外な親和性があります。ウィリアム・モリスは、植物や自然をモチーフにした緻密なパターンで知られていますが、その表現には日本美術からの影響も指摘されています。自然のモチーフを繰り返しの柄として暮らしに取り入れる感覚は、日本のインテリアにもなじみやすく、実は和室や木の家具のある空間にも合わせやすい要素です。
特に、リビングの小窓や寝室、書斎など、窓辺に少し個性を加えたい場所では、ローマンシェードがインテリアの印象を大きく変えてくれます。カーテンのように大きな面積で柄を取り入れるのではなく、窓のサイズに合わせて“額装されたテキスタイル”のように見せられるため、英国らしい柄を上品に楽しみたい方にもおすすめです。

クールグレーから、温かみのあるニュートラルへ
イギリスのインテリアでは、ここ数年で色の好みにも変化が見られています。
担当者によると、以前はクールグレーが人気だった一方で、近年はオートミール、ウォームホワイトなどの色合い、リネン調の質感、ナチュラルな織り感のある生地など、より温かみのあるオーガニックな色・素材感へと好みが移っているそうです。また、北欧のミニマルさと和の自然素材感を組み合わせた「ジャパンディ」スタイルも、イギリスのインテリアトレンドに影響を与えています。
クールグレーは、白い壁やグレーのソファ、メタルや大理石調の素材と合わせることで、すっきりとモダンに見せやすい色です。一方で、最近人気のウォームホワイトやオートミール、ベージュ、リネン調の色合いは、木の家具やラタン、陶器、やわらかなファブリックと相性がよく、部屋全体をより落ち着いた印象に見せてくれます。
つまり、同じニュートラルカラーでも、以前のグレーは「整ったモダンさ」、近年の温かみのあるニュートラルは「くつろげる自然な心地よさ」をつくる色だと言えます。
イギリスでも高まる、暑さとエネルギーへの意識
イギリスというと、涼しく曇りがちな気候を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし近年は、夏の暑さやエネルギーコストも住まいづくりの大きなテーマになっています。
2022年には初めて気温が40℃を超え、2026年も猛烈な熱波を経験しており、暑さ対策が社会的な問題になりつつあります。
また、英国下院図書館の資料では、一般家庭のエネルギー料金は2022年4月に54%、同年10月に27%上昇したとされています。こうしたエネルギーコストの上昇も、住まいの断熱性や快適性への関心を高める背景になっています。
担当者のコメントでも、2022年のエネルギー危機以降、断熱性のある商品への関心が高まっていることが挙げられています。夏は光や熱をどう遮るか、冬は窓まわりからの冷えをどう和らげるか。イギリスの窓辺でも、デザイン性だけでなく、快適性や機能性がより重視されるようになっています。
現地担当者コメント
イギリスでは、いつも十分な日差しが得られるわけではありません。だからこそ、よい光が入る日は、人々がその光にとても敏感になります。私たちのブランドは、限られた光を最大限に楽しむという考え方を大切にしています。窓辺のブラインドは、外の景色を美しく切り取りながら、自分にとって心地よい光の中で暮らすための存在なのです。
このコメントからもわかるように、イギリスの窓辺は、ただ日差しを遮るためのものではありません。限られた光をどう取り入れ、どう整え、どう楽しむか。そこにイギリスらしい窓装飾の考え方があります。
日本の住まいに取り入れるなら
イギリスの窓辺から学べることは、「カーテンではなくブラインドを使う」という単純な話ではありません。大切なのは、窓の形、床や家具の素材、部屋に入る光の質に合わせて、窓装飾をインテリアの一部として選ぶことです。
たとえば、木の家具やフローリングがある部屋なら、ウッドブラインドを合わせることで、窓辺と部屋全体に統一感が生まれます。ナチュラルな雰囲気をつくりたい場合は、グレーよりもオートミール、ベージュ、ウォームホワイトのような温かみのあるニュートラルカラーを選ぶと、やわらかく今らしい印象になります。
柄物を取り入れたい場合は、ローマンシェードもおすすめです。英国デザインの生地を窓辺に取り入れることで、カーテンよりもすっきりと、でも印象的なアクセントをつくることができます。

また、夏の暑さや冬の冷えが気になる窓では、デザインだけでなく、遮光性や断熱性といった機能面にも注目してみるとよいでしょう。窓まわりを整えることは、部屋の印象を変えるだけでなく、毎日の暮らしをより快適にすることにもつながります。
イギリスの窓辺から学べること
イギリスの住まいでは、古い住宅の窓や建具の個性を活かしながら、木製ブラインドやローマンシェードで光とインテリアを整える考え方が根づいています。
日本の住まいでも、窓をただ隠すのではなく、窓の形や部屋の素材感に合わせて選ぶことで、より自然で心地よい窓辺をつくることができます。木の質感、温かみのあるニュートラルカラー、そして英国らしい柄を楽しむローマンシェード。イギリスの窓辺には、日本の住まいにも取り入れやすいヒントが詰まっています。
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