Tuissは、英国発のオーダーメイドブラインド・カーテンブランドとして、日本を含む世界各国で窓まわりの商品を展開しています。国が変われば、住まいの形や気候、光の入り方、インテリアの好みも変わります。そして、その違いは窓辺に選ばれる商品にも表れます。
この連載「世界の窓辺レポート」では、Tuissが展開する各国の担当者へのヒアリングをもとに、世界の窓まわり事情を国別にご紹介します。単に海外のトレンドを紹介するだけでなく、「なぜその商品が選ばれているのか」を住宅事情や気候、ライフスタイルまで掘り下げながら、日本の住まいにも取り入れやすいヒントをお届けします。
第2回は、北欧・スウェーデン。スウェーデンの窓辺を考えるうえで欠かせないのが、「光」です。冬は日が短く、限られた自然光をできるだけ室内に取り込みたい。一方、夏は夜遅くまで明るいため、寝室ではしっかりと光を遮る必要があります。そんな季節による光の大きな変化が、スウェーデンならではの窓まわりの選び方につながっています。
目次
Toggle長い冬と明るい夏。窓辺は“光を整える場所”
スウェーデンの冬は、日本の本州で暮らす感覚とは大きく異なります。首都ストックホルムは、冬になると雪や氷が暮らしの一部になります。
ストックホルム市の環境データによると、市内のObservatorielundenで観測された「1cm以上の積雪がある日数」は、1991〜2020年の平年値で65日です。一方、東京では同じ1991〜2020年の平年値で、最深積雪1cm以上の日数は年間4.0日。東京では雪が降るのが特別な出来事のように感じられますが、ストックホルムでは雪のある景色が日常の一部になります。

雪が残る日が続き、外の景色が白やグレーに包まれる季節には、家の中で過ごす時間が自然と長くなります。だからこそ、室内には明るさ、温かさ、そして落ち着きが求められます。窓辺も単なる装飾ではなく、外の厳しい冬と、室内の心地よさをつなぐ大切な場所になるのです。
もうひとつ大きいのが、季節による日照時間の差です。ストックホルムでは、2026年6月21日の日照時間が18時間37分ほどある一方、12月1日の日照時間は6時間39分ほどしかありません。夏と冬で、1日の明るさが12時間近く変わることになります。
つまり、夏場は午前4時には外が明るくなる一方で、冬場は午後3時には夜になってしまうのです。
この大きな差が、スウェーデンの窓まわりの考え方に影響しています。冬は、少ない自然光をできるだけ失わないように、窓辺には白やオフホワイト、淡いベージュのような明るい色が選ばれやすくなります。一方で、夏は夜遅くまで明るいため、寝室では遮光性も重要になります。
スウェーデンの担当者は、スウェーデンの窓辺について「光を失わずにコントロールすること」が大切だと説明しています。冬の自然光はとても貴重である一方、夏には睡眠のための遮光、日差しや視線のコントロールも必要になります。
つまり、スウェーデンの窓装飾は、ただ光を遮るためのものではありません。季節や部屋の用途に合わせて、光を取り込み、やわらげ、必要なときには遮る。窓辺は、光と暮らしのバランスを整える場所なのです。
人気の中心はロールスクリーン。遮光・電動・淡色がキーワード
スウェーデンで最も人気のあるカテゴリーはロールスクリーンです。担当者によると、ロールスクリーンは売上の中でも大きな割合を占めており、特に遮光タイプ、電動タイプ、そしてシンプルなニュートラルカラーが人気です。
ロールスクリーンが選ばれる理由は、見た目のシンプルさと機能性のバランスにあります。窓まわりをすっきり見せながら、日差し、視線、睡眠環境を調整できる。淡い色を選べば、部屋を暗く見せすぎず、北欧らしい明るく穏やかな印象も保てます。
次に人気なのがローマンシェードです。スウェーデンでは、リネン調の生地や、オートミール、アラバスター、白などのやわらかな色合いが人気で、ローマンシェードは売上のおよそ4分の1を占めるカテゴリーとして挙げられています。
3番目に挙げられているのが、ハニカムシェードです。光の調整やプライバシーに加え、窓まわりの断熱性を補う商品としても注目されています。スウェーデン担当者は、近年の傾向として、遮光、簡単取り付け、電動、そして自然な質感を持つシンプルな商品が伸びていると説明しています。
白、オートミール、ベージュ。淡色ミニマルが選ばれる理由
スウェーデンの窓まわりでは、白、オフホワイト、アラバスター、オートミール、ベージュ、グレージュ、ペブル、淡いグレーなど、明るく落ち着いた色が好まれています。
スウェーデンと聞くと、IKEAのようにカラフルで遊び心のあるインテリアを思い浮かべる方もいるかもしれません。実際、スウェーデン発のインテリアには色を楽しむ感覚もあります。それでも窓まわりに淡くミニマルな色が選ばれやすいのは、窓辺が部屋の“主役”というより、光を受け止め、空間全体を整える“背景”に近い存在だからだと考えられます。
北欧の暮らしでは、冬の暗さがあるからこそ、室内の明るさや余白が大切にされます。窓辺に濃い色や重い印象の装飾を使うと、限られた自然光を受け止める場所が重く見えてしまうことがあります。一方で、白やオートミール、ベージュのような淡い色は、光をやわらかく反射し、部屋全体を明るく穏やかに見せてくれます。

ここには、スウェーデンらしい “lagom(ラーゴム)” の感覚も重なります。Visit Swedenは、lagomを「多すぎず、少なすぎず、ちょうどよい」バランスや満足感を表す言葉として紹介しています。
窓まわりでも、色や柄で強く主張しすぎるのではなく、自然光、プライバシー、室内の落ち着きをちょうどよく整える。スウェーデンの淡色ミニマルな窓辺には、そうしたバランス感覚が表れているのかもしれません。
また、スウェーデンでは “mys(ミース)” という、居心地のよさやぬくもりを表す感覚も大切にされています。デンマークの “hygge(ヒュッゲ)” に近い言葉として語られることもありますが、スウェーデンの窓辺では、やわらかな光、淡い色、自然素材の質感によって、静かで落ち着いた心地よさがつくられていると言えます。
集合住宅にも馴染む、部屋を圧迫しない窓まわり
スウェーデンの窓まわりを考えるうえでは、住宅事情も重要です。
Statistics Swedenによると、2025年末時点でスウェーデンには約529万戸の住戸があり、そのうち52%は集合住宅、41%は一戸建てまたは二戸建て住宅にあります。また、集合住宅では賃貸住宅が58%、住戸所有型が42%とされています。

集合住宅では、窓の外に隣の建物や通りが近いこともあります。そのため、完全に閉じて暗くするのではなく、自然光を取り入れながら視線を整えることが大切になります。部屋を広く、明るく、すっきり見せたいというニーズも高くなります。
ロールスクリーンやハニカムシェードのような商品は、窓まわりに大きなボリュームを出さず、コンパクトに収まりやすいのが特徴です。淡い色を選べば、窓辺だけが強く主張せず、部屋全体のインテリアに自然に溶け込みます。
スウェーデン担当者の回答でも、近年は「シンプルに見えて、実際の暮らしの課題を解決する商品」が人気を集めているとされています。たとえば、寝室の遮光、簡単取り付け、電動タイプ、そして自然な質感を持つ生地などです。
セントラルヒーティングがある国で、なぜハニカムシェードが選ばれるのか
寒さに話を戻すと、スウェーデンの住まいでは、暖房や断熱への意識が日本とは少し異なります。集合住宅ではセントラルヒーティングや地域暖房が広く使われ、窓まわりにも断熱性の高い仕様が取り入れられていることが多くあります。
そのため、スウェーデンでハニカムシェードが選ばれる理由は、単に「暖房効率を上げるため」だけではありません。もちろん、ハニカムシェードの特徴である蜂の巣状の構造は、窓と室内の間に空気層をつくり、窓まわりの冷えや暑さをやわらげるのに役立ちます。冬は窓際の冷気を感じにくくし、夏は強い日差しによる室温上昇を抑える効果が期待できます。
ただ、スウェーデンでハニカムシェードが人気の理由は、「省エネのための商品」というより、すでに整えられた室内環境をさらに心地よくするための選択肢と考えられています。
冬は、窓際の冷えをやわらげながら、部屋をより守られたような落ち着いた雰囲気にする。夏は、冷房が一般的ではない住まいでも、強い日差しや室内にこもる熱をやわらげる。ハニカムシェードは、季節ごとの不快感を少しずつ整える窓まわりとして受け入れられています。
また、ハニカムシェードの魅力は他にもあります。採光タイプのハニカムシェードは、二重の生地が作り出す角度によって外から入る光をやわらかく拡散し、部屋全体を明るく穏やかな印象に見せてくれます。
冬の自然光が貴重なスウェーデンでは、窓辺を暗く重く見せないことが大切です。採光タイプのハニカムシェードなら、プライバシーを保ちながら光をやわらかく取り込み、窓まわりをすっきりと明るく整えることができます。
つまり、スウェーデンでハニカムシェードが支持される背景には、断熱性や遮熱性だけでなく、光を失わずに部屋の心地よさを高めるという、北欧らしい窓辺の考え方があるのです。

電動タイプは、北欧らしい機能美の延長にある
スウェーデンでは、電動タイプへの関心も高まっています。スウェーデンの担当者によると、電動ブラインドやスマートブラインドは近年人気が出てきており、特に大型の窓、手が届きにくい窓、寝室などで便利な選択肢として受け入れられています。
電動タイプというと、日本ではまだ少し特別な設備のように感じられるかもしれません。しかし、スウェーデンの文脈では、派手なテクノロジーというより、日々の暮らしを静かに快適にする機能として捉えるとわかりやすいです。
朝は自然光を取り入れ、夜はプライバシーを確保する。夏の夜には寝室をしっかり暗くし、冬の朝には少ない光を逃さず取り込む。こうした毎日の小さな調整を簡単にできることは、季節による光の変化が大きいスウェーデンの暮らしに合っています。
スウェーデンの窓辺に見られるミニマルさは、何も足さないという意味ではありません。必要な機能を、できるだけすっきりと、暮らしの中に自然に溶け込ませる。そこに、北欧らしい機能美があるのだと思います。
現地担当者コメント
スウェーデンの窓辺づくりは、光を失わずにコントロールすることが大切です。冬の自然光はとても貴重なため、多くの人は部屋に溶け込むような淡くミニマルなブラインドを選びます。そのうえで、睡眠、プライバシー、断熱が必要な場面では、遮光タイプ、ハニカムタイプ、電動タイプを取り入れています。
このコメントからもわかるように、スウェーデンの窓辺は、ただ外からの光を遮るためのものではありません。長い冬の少ない光をできるだけ活かしながら、夏の明るさや視線、窓際の寒さや暑さを暮らしに合わせて整える。スウェーデンの窓装飾は、光と快適性のバランスを取るための道具なのです。
日本の住まいに取り入れるなら
スウェーデンの窓辺から学べることは、北欧らしいお部屋を作るポイントは、ただ北欧風の家具や雑貨を取り入れることだけではありません。窓辺そのものを、部屋の明るさや心地よさを整える場所として考えることです。
たとえば、リビングやダイニングを明るく見せたい場合は、白、オートミール、ベージュなどの淡い色のロールスクリーンを選ぶと、部屋全体が軽やかにまとまります。カーテンのように生地のボリュームを出さず、窓まわりをすっきり見せたい場合にも取り入れやすい選択肢です。
寝室では、遮光タイプを選ぶことで、朝日や外からの光を調整しやすくなります。特に、夏の朝日が早く入る部屋や、街灯の光が気になる部屋では、遮光ロールスクリーンが役立ちます。
冬の冷えや夏の暑さが気になる窓には、ハニカムシェードもおすすめです。日本でも、窓際の冷えや西日の暑さに悩む住まいは少なくありません。ハニカムシェードなら、見た目はシンプルなまま、窓まわりの快適性を補うことができます。
また、毎日開け閉めする大きな窓や、手が届きにくい高窓には、電動タイプも便利です。スウェーデンの窓辺のように、光を暮らしに合わせてこまめに調整する発想は、日本の住まいにも取り入れやすいヒントです。
スウェーデンの窓辺から学べること
スウェーデンの窓辺は、光を遮るためだけのものではありません。冬の少ない自然光をできるだけ失わず、夏の長い日差しや視線は上手にコントロールする。淡色でミニマルなブラインドが選ばれる背景には、北欧らしいデザインの好みだけでなく、光とともに暮らすための実用的な知恵があります。
日本の住まいでも、淡い色のロールスクリーンや、遮光・ハニカム・電動タイプを上手に使い分けることで、部屋を暗くしすぎず、心地よく整った窓辺をつくることができます。北欧らしい窓辺とは、ただシンプルなだけではなく、光、温かさ、プライバシー、そして暮らしやすさをちょうどよく整える窓辺なのです。
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